新鋭・さんじろによる記念すべき1stコミックスが、人外恋愛ファンの心を鷲掴みにしている。タイトルが示す通り、本作は「種族が違っても愛は可能なのか」という普遍的なテーマを、繊細かつ大胆に描いた珠玉の作品集。

宇宙規模の恋物語「2万8千光年からの恋人」
収録作品の中でも特に注目すべきは、人外界隈で話題沸騰となった「2万8千光年からの恋人」。宇宙人との恋愛という壮大な設定ながら、描かれるのは等身大の恋心の揺れ動きだ。「私みたいなバケモノがあなたと恋人になってもいいの?」という切ない問いかけが、読者の胸を強く打つ。
物理的な距離よりも、心の距離こそが恋愛の真の障壁であることを、作者は巧みに表現している。異なる種族だからこそ生まれる葛藤と、それを乗り越えた時の愛の尊さが丁寧に描写されている。

多彩な人外キャラクターたち
本コミックスには7つの短編が収録されており、それぞれ異なるタイプの人外キャラクターが登場する。宇宙人から獣人まで、バラエティ豊かなラインナップは読者を飽きさせない。
「恋するビーストモード」では野生と理性の狭間で揺れる獣人の心情を、「すべてがつながる場所で、また。」ではSNSで大反響を呼んだ独特の世界観を展開。どの作品も短編ながら印象深く、さんじろの表現力の幅広さを感じさせる。

愛の本質を問う物語
この作品集の真の魅力は、外見や種族の違いを超えた「愛とは何か」という根本的な問いかけにある。登場人物たちの「違い」は決してネガティブな要素として描かれず、むしろ互いを理解し合うための架け橋となっている。
読者は彼らの恋路を見守りながら、自然と「愛に境界線はあるのか」「相手を受け入れるとはどういうことか」といった深いテーマについて考えさせられる。

まとめ:新たな恋愛漫画の地平線
「ヒトじゃなくても君が好き」は、ただの人外恋愛漫画を超えた作品だ。異種間という設定を通じて、現実の恋愛にも通じる普遍的な感情を描き出している。さんじろの今後の活躍が大いに期待される、記念碑的な1冊と言えるだろう。
人外恋愛が好きな読者はもちろん、新しいタイプの恋愛漫画を求める全ての読者におすすめしたい作品集である。

おすすめ度:★★★★☆
ジャンル:SF・ファンタジー・恋愛
対象読者:人外恋愛ファン、新感覚恋愛漫画を求める読者