『レッド』完結から2年の沈黙を破り、山本直樹が辿り着いた新たな表現の頂点
漫画界の巨匠・山本直樹が、代表作『レッド』の完結から2年の歳月を経て放つ、完全新作『田舎』。これまでの作風とは一線を画す、まさに作家としての「結論にして新境地」と呼ぶにふさわしい傑作が誕生した。

物語の舞台は、時が止まったような田舎の夏
東京の猛暑から逃れるように、受験勉強のため親戚の家に身を寄せた少年・フーちゃん。そこで出会ったのは、その家に住む少女・キーちゃんだった。都会の喧騒を離れた静寂な田舎で、二人の間に芽生える感情は、大人たちの知らない秘密の世界を織りなしていく。

「ウルトラピュア」という表現の妙
作者が「ウルトラピュアストーリー」と称するこの作品の魅力は、その純粋無垢な描写にある。親には決して言えない、しかし決して汚れていない、青春期特有の繊細で美しい感情の機微が、山本直樹独特の筆致で丁寧に描かれている。
山本直樹だからこそ描ける「純粋さとエロス」
長年にわたり人間の複雑さを描き続けてきた山本直樹が、今度は「純粋さ」という新たなテーマに挑戦。これまでの作品群で培われた人間観察眼と表現力が、今作では全く異なる方向性で開花している。読者は、作家の新たな一面を発見する喜びと同時に、自身の青春時代の記憶を呼び覚まされることだろう。
それと同時に、少女だけがもつエロスを堪能できる。

こんな読者におすすめ
- 山本直樹作品のファンで、作家の新境地を体験したい方
- 青春の甘酸っぱい記憶を呼び覚ましたい大人の読者
- 純粋で美しい恋愛漫画を求めている方
- 田舎の夏の情景に郷愁を感じる方
評価:★★★★☆
『田舎』は、山本直樹という作家の新たな可能性を示すと同時に、読者の心に深く刻まれる名作となるだろう。この夏、あなたもフーちゃんとキーちゃんの秘密の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
唯一惜しいのは、白塗り多様の部分だろう。